[ 003 ] 光がん免疫療法
概要説明
体内のさまざまな場所にできたがん組織のごく近くにレーザー光をあてて腫瘍を破壊し、その後周囲に散らばったがん細胞を免疫細胞によって駆除させるという2つの作用をもつ治療法です。
治療・検査法の特徴
MLDS(マルチレーザーデリバリーシステム)という医療レーザー機器を使用します。
体の外部からはもちろん、0.5ミリのファイバーを使って静脈血管内、間質内、関節内からも照射が可能で、腫瘍周辺に多方向から集中的にレーザー光を当てることができます。
この治療法はメキシコのティファナにあるHOPE4CANCERという世界でも有数の統合医療クリニックでも行われています。統合腫瘍治療において、最も重要なことはがん抗原を免疫機能に影響を与えない形で放出するという概念ですが、光感受性物質で選択的にがんを傷害する方法は最も効率的な治療ステップの第一歩です。
正常組織に薬剤等の影響が及びにくいため、副作用が少ないのが特徴で、EPR効果を用いた治療(EPR効果は2016年にノーベル賞候補にもなった前田浩氏の研究による技術です。)と放射線治療などの他のがん治療が同時に行えるという特徴を持ちます。
EPR効果の特徴
治療には、リポソーム加工した光感作物質と低出力レーザーを使用します。光感作物質とは、レーザー光を当てることによって、周囲にエネルギーを放出し、酸化反応を起こす色素になります。これを、がん細胞にのみ蓄積する脂質の膜に包んで、100nm(ナノメートル)くらいの大きさに加工(リポソーム化)します。
次にリポソーム化した光感作物質を点滴にて静脈に投与します。
リポソーム化した光感作物質を点滴後に、腫瘍の近くにファイバーを通してレーザー光を照射します。がん細胞などに蓄積した光感作物質がレーザー光に反応して、周囲にエネルギーを放出します。その際、光感作物質の周辺に酸化反応が起こり、周辺の酸素が過酸化物質に変わります。過酸化物質に取り囲まれたがん細胞は死滅します。
なお周辺の正常細胞には、過酸化物質を解毒するオキシダーゼという酸化酵素が備わっているため、過酸化物質による影響は受けません。
がん免疫サイクル
このがん免疫サイクルにおいて最重要なのが、①のステップ 「がん抗原の放出」です。どんなに免疫機能が高くても、このステップがなければ治療サイクルが始まらないのです。また抗がん剤はがん抗原を放出するのですが、その後のリンパ球(免疫機能)までも破壊してしまうのでがん組織を消滅させることが難しいと考えられます。
体内からがんを退治するためにはがん抗原を無害な方法で放出することと、免疫機能が正常であることがポイントです。
CTC(循環腫瘍細胞:血管内を回っているがん細胞)
*CTC(循環腫瘍細胞:血管内を回っているがん細胞)に吸着し、MLDSによる血管内照射を行うことでCTCを障害し、がん抗原の放出や転移・再発抑制に効果が期待できます。
この治療法でがん抗原を放出し、水素吸入療法や免疫療法、ワクチン療法、免疫賦活サプリメント、温熱治療、解糖系ブロック治療などを併用することで奏効率上昇を目指します。
副作用
静脈内の光感作物質は、EPR効果により、がん細胞に集積します。リポソーム化した光感作物質は無害なため、この時点で副作用が発生したり、身体に変調をきたすことはほとんどありません。
適応するがんの種類
大腸がん 膵臓がん 食道がん 胃がん 肝がん 腎がん 胆道がん 膀胱がん 前立腺がん 甲状腺がん メラノーマ 肺がん 乳がん 子宮体がん 子宮頸がん 卵巣がん 口腔がん 咽頭がん など
※脳腫瘍・骨腫瘍など、レーザー光の届きにくいがんは適応外です。
こんな方が受けられています
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副作用が少ないがん治療をご希望の患者さま
末期がんの患者さま、難治性がんの患者さま
抗がん剤や放射線治療との併用を考えられている患者さま
リスク・副作用
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点滴の際に、まれに皮下血腫・神経損傷などの合併症が起きることがあります。
治療後、悪寒戦慄などをおこす可能性があります。
全てのがんの根治に繋がるものではありません。
ICGリポソームを用いた光がん免疫療法(1)
P53ウイルスベクター投与および放射線治療を行った。
ICGリポソームを用いた光がん免疫療法(2)
マルチレーザーデリバリーシステムを用いて内視鏡的に光がん免疫療法
ICGリポソームを用いた光がん免疫療法(3)
初発から1年以上経過 再発は認めていない(2020/12/09)
備考
EPR効果とは?
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抗がん剤のような低分子の薬剤や遺伝子などを、がん細胞に効率的に運ぶDDS(ドラッグデリバリーシステム)の一種です。 がん細胞は分裂や増殖を行うために、周囲の毛細血管から新たに「新生血管」を作りだし、酸素や栄養をそこから取り込みます。新生血管は血管壁が正常血管よりも荒く、100〜200nm(ナノメートル)程度の隙間が空いています。
抗がん剤やがん治療に使う遺伝子、そして光感作物質の大きさは、通常で1nm(ナノメートル)以下の低分子です。この大きさのまま体内に投与すると、正常血管からも漏れ出してしまい、がんになっていない正常な組織にも届いて細胞を破壊してしまいます。抗がん剤などで副作用が出るのはこのためです。
そこで、正常血管からは漏れ出さずに、新生血管からのみ漏れ出すように、薬剤等の大きさを100nm(ナノメートル)程度に加工します。大きくなった薬剤等は、正常血管からは飛び出さす、新生血管からのみ飛び出すため、がん細胞に集中的に蓄積されます。さらに、漏れ出した薬剤等はふたたび血管内に戻りにくく、がん細周辺に留まります。
MLDS(マルチレーザーデリバリーシステム)とは
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100ミリワット以下の低出力照射が可能なレーザー機器です。静脈内、間室内、関節内、あるいは外部からのレーザー照射が可能です。
レーザー光治療によってがん細胞を破壊した際に、がん細胞の破片(ペプチド)が周辺に飛び散ります。 この破片を体内に存在する免疫細胞が認識し、同種のがんに攻撃を開始します。散らばった破片はもちろん、レーザー光を照射した組織から遠く離れた位置にある同種の転移がん細胞にも免疫細胞が攻撃を行います(アブスコパル効果)。
アブスコパル効果とは免疫システムの働きにより、レーザー光を当てた位から離れたところにあるがん細胞が縮小する現象 レーザー光で幹細胞を破壊し、免疫細胞の働きを高めてさらなる治療効果の向上を狙います。
レーザー光で局所がん細胞を破壊し、その後免疫細胞の働きを高めてさらなる治療効果の向上を狙います。一度の治療で長期間の効果が期待できるのも特徴です。
EPR効果による腫瘍組織への集積
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今回使用するICGリポソームには大きな特徴として以下が挙げられます。
*EPR効果(ポリマーピラルビシン、高分子抗がん)と同様のメカニズムでがん細胞の新生血管へ選択的に集まり635~810nmの波長の光に反応し温熱効果と細胞障害効果を発揮しがん細胞のみを選択的に破壊する。