[ 001 ] がん遺伝子治療

免疫療法
がん細胞をアポトーシス(自死)させる

概要説明

がん遺伝子治療

がんの発症には様々な遺伝子が関与していることが分かっています。
人体では、慢性的な炎症や発がん性物質の摂取、放射線、喫煙、ストレスなどで多くの活性酸素を発生させることでDNAの損傷が起きますが、その損傷を修復、あるいは修復不能な細胞には自死(アポトーシス)するように指令を出して「細胞のがん化」を防ぐメカニズムが起きており、結果的にそれによって発がんを抑えています。

しかし、そのがん抑制遺伝子自体が変異を起こすことがあります。

P53遺伝子変異がその代表的なもので、ほかにもp16、PTEN、またcdc6shRNAなど遺伝子変異は様々な箇所で日々起こっています。たとえば、もしP53が壊れたら、細胞の自死(アポトーシス)がおこらないため、がん細胞の増殖が止まらなくなります。

遺伝子治療では、これらの遺伝子を正常に修復することで、異常細胞であるがんをやっつけることを目的とした治療法です。それぞれの患者のがんの種類を調べ、適切な遺伝子を選別し投与します。
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がん遺伝子治療の特徴

遺伝子の運び屋(ベクターと言います。)を利用します。

この運び屋ウイルスに正常な遺伝子情報を組み込み、がん細胞に感染させることで、がんの持つ壊れた遺伝子を修復し、自死(アポトーシス)を誘導する治療法です。
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施術方法

点滴で十分な抗腫瘍効果が期待できます。点滴にておこないますので大抵の場合入院は不要、通院で可能です。点滴イメージ
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遺伝子の司令塔 「p53遺伝子」

遺伝子の司令塔の「p53遺伝子」

がんを防ぐためにさまざまな遺伝⼦に命令を出す司令塔の役割を担う遺伝子で、「ゲノムの守護者」とも呼ばれています。
細胞にかかるストレスやDNA損傷などの「危険信号」を察知 すると活性化するのですが、細胞の傷を修復させたり、自死(アポトーシス)させることでがん化する前に細胞を消し去ることが主な役割となるがん抑制遺伝⼦です。これにより過剰な細胞増殖を⽌めることになります。
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発がんを予防する生体防御機構 「p16遺伝子」

p16は、細胞周期をG1期で停止させ、細胞老化を誘導します。
細胞老化とは、細胞の異常な増殖を防ぎ、発がんを予防する生体防御機構で、正常な細胞ではp16はほとんど機能していません。

本来、細胞が限界まで分裂した場合や、様々な発がんストレスにさらされた場合はp16が活発に活動することになります。
しかし がんが発生した細胞においては、p16の変異や活性が停止していることが多いため、悪性細胞の増殖をゆるしてしまうことになります。
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自死(アポトーシス)を制御する 「PTEN」

PTENは、アポトーシスの抑制や細胞増殖など、細胞の生存シグナルにおいて重要な役割を果たしているがん原遺伝子のAKTの働きを制御します。 そのため、PTENに変異が起こると、AKTの働きを制御することができなくなり、AKTが不要に活性化することでアポトーシスの抑制や細胞増殖などに影響が発生します。
PTENは、多くのがんで高頻度に変異や欠損が認められる、がん抑制遺伝子です。
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細胞の増殖を抑える 「cdc6shRNA」

cdc6(cell division cycle 6)は、細胞を増殖させるために働くタンパク質で、細胞周期の調節因子の一つです。
通常は細胞周期の初期(G1期)にのみ少量発現されるのに対して、多くのがん細胞では全周期(G1、S、G2、M期)において大量に発現しています。cdc6の過剰な発現により、がん細胞は分裂をコントロールできなくなり無限に増殖します。
さらに、がん抑制遺伝子の機能も抑えられ、がんの進行につながっています。
cdc6shRNAは、がん細胞中のcdc6の発現を阻害することで、がん細胞の増殖停止や、細胞のアポトーシス(自死)へと誘導します。
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がんを選択的に攻撃 「TRAIL」

TRAILは、TNF(tumor necrosis factor; 腫瘍壊死因子)ファミリーに属する免疫システムのサイトカイン伝達物質です。
がん細胞の表面に存在する受容体(デスレセプター)への特異的な結合を介してアポトーシス誘導シグナルを細胞内に伝達し、周囲の正常組織に影響を与えずにがん細胞に対して選択的に攻撃できるといわれています。
炎症を引き起こして腫瘍原性(発がん能)を抑制したり、アポトーシスのプロセスを促進します。
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適応するがんの種類

どのような方でも治療可能です。
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もともと身体の中にある遺伝子を入れるので、副作用が少ないものです。それは抗がん剤のようにがん細胞を攻撃するものではないためであると考えられます。

標準治療ができない方でも受けられます。
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がんの発生・増殖メカニズムの根本に働きかけるため、標準治療とは全く違うアプ ローチができます。

他の治療との併用で相乗効果が期待できます。
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アポトーシス(細胞自死)を誘導するためそのきっかけになる放射線治療、抗がん剤治療、フェロトーシスを誘導するアルテミシミン注射などとの併用が効果的です。
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